西の魔女が死んだ。
享年76歳。
良く言えば天真爛漫、無邪気、
逆ならば 自己中心、超我儘。
楽しい思い出は一つもない。思い出されるのは苦しくて、悲しくて、辛くて、悔しい気持ち。
この20年間、彼女が友人と遊びに出掛けたことも、誰かがお見舞いに来たことも無かった。
いつも文句と不満を撒き散らし、犬と戯れるか、病院に行くか、の生活。
生き様は歳を取れば取るほど現れる。
葬式は身内だけだった。
最後までヘルパーさんに文句を言い、顔を見ただけで気に入らないと交代させ、食事もマヨネーズの味が違うと罵り、部屋も何度も変えたとか。
脳梗塞で倒れるまで夫をこき使い、それでもまだ触るな、やり方が悪いと不平ばかりだったとも。
笑いながら話す義父。でも最後まで看取った。
私も散々苦しめられたが、魔女は自分を貫いた。
兎に角自分が一番で、楽しくなくちゃ駄目。
周りに嫌われようと、お構い無し。
でも、言葉と裏腹な事はしなかった。
それだけはわかる。
私に何が出来たのだろう。
近づくと、また勘違いするかも、また苦しめられるかも、と思うと距離を置いていた。
魔女の従姉妹にあたる人が私に言った。
彼女とはね、そりゃ何度も喧嘩したし、嫌な事言われてずっと距離を置いた時期も沢山有ったの。
でも、私の方が強情だったかもしれない。
いつも決まって彼女から電話かかってきたの。
今何してるん?って、何にも無かったみたいに。
私にはその発想は無かった。
一度、言い争いをしてからは二度とこんな思いはしたく無いとうわべだけの付き合いに徹してきたけど、もう少し、もう何度か、楽しい思い出を作ってあげたら良かったかもと、思った。
もう遅いけど。死んでしまったのだから。
でも孝行出来なかったのはやはり魔女自身の振舞い、生き様の結果なのかも。
自分のした事は自分に返ってくる。
我が身にも勉強になった。
さようなら。あの世で楽しめるといいね。